まず、結論
年間の離職率と入社直後の離職は別の問題。90日以内に辞めるなら、募集時の説明と実際の仕事、初期支援、相談先の差を確認する。全社年率だけでは、この差が埋もれる。
まず、原因を切り分ける
初日の準備、最初の仕事、上司の面談、相談先、評価説明を入社者ごとに確認する。退職理由の『一身上の都合』を原因として処理せず、本人が共有できる範囲で期待差と支援の不足を聞く。退職率と成長速度を別々に測る。
| 原因の候補 | 確認する証拠 | 先に変えること |
|---|---|---|
| 期待差 | 説明と実務の違い | 募集と受入を照合 |
| 支援不足 | 質問先が分からない | 相談と練習の機会 |
| 配置不一致 | 任せる役割が変わった | 役割を再合意 |
自社への3つの問い
- 初日に必要な道具、権限、席、担当者は揃っていたか。
- 最初の30日に求める成果を、新人と上司は同じように理解しているか。
- 困った時に相談できる相手と、回答の期限は明確か。
この課題に使える根拠
離職を比べるときは、働き方の違いを揃える
2025年の年間離職率。全国16大産業・常用労働者5人以上の事業所。年初の常用労働者数を分母とする推計値(概況6ページ・表1)。
- 一般労働者の年間離職率
- 11.4%
- パートタイム労働者の年間離職率
- 19.9%
出典:厚生労働省 / 2025年雇用動向調査(2026年8月31日公表) 原資料 ↗
数字・資料の読み方一般労働者はパート以外で、正社員だけではありません。出向等も含みます。入社90日離職率や自発的退職だけの割合とは比較できません。調査全体の有効回答は上半期9,277、下半期8,807事業所。
人事の判断にどう使うか
JPMの読み解き・実務仮説年間の離職率と入社直後の離職は別の問題。90日以内に辞めるなら、募集時の説明と実際の仕事、初期支援、相談先の差を確認する。全社年率だけでは、この差が埋もれる。
最初に確認する自社データ・現場の声
同じ入社月の人を90日後まで追い、入社人数・在籍人数・退職理由を残す。まだ90日経っていない人を分母に混ぜない。
なぜ、その打ち手を選ぶのか
新人は能力があっても会社固有の判断基準を知らない。説明されない期待に合わせようとすると、学習より不安が先に立つ。目標と相談先が分かり、仕事が止まった時に支援を得られれば、成果を出すために試行できる。オンボーディングは研修を消化することではなく、仕事、関係、期待を接続すること。完了した手続きと本人の理解を別々に確認する。
自社に当てはめる仮想例
仮想例。受入研修はすべて実施していたが、新人が一人で手順を探していた。研修内容ではなく、仕事を始める権限と質問先の問題だった。初週の仕事を限定し、支援担当と確認日を決め、止まった場面を週次で聞く。確認するのは研修完了率に加えて、仕事を始めるまでの待ち、質問解決、初期成果。支援者の負担が増えすぎた場合は、担当人数や資料を見直す。
別の原因なら、別の打ち手
入社前の説明と実態が違うなら、受入を丁寧にするだけでは足りない。求人や選考で伝える内容を修正する。役割そのものが合わない場合は、配置と期待の再確認が必要。心理的な不安を本人の弱さと解釈する前に、相談への反応と仕事の難しさを点検する。早期離職が少なくても成果まで時間がかかる場合は、定着と学習を別の課題として扱う。
- 01原因の証拠
- 02変える条件
- 03担当と試行
- 04行動の変化
- 05継続・修正
5つの施策を、同じ観点で比較する
| 施策 | 最初の着手 | 見る指標 |
|---|---|---|
| Realistic Job Preview | 新人が驚いた仕事内容や働き方を集め、求人と面接の説明との差を確認する。 | 入社前後の期待差、90日定着、辞退理由 |
| 30・60・90日計画 | 役割に応じた初期成果を上司と決め、最初の30日に絞って具体化する。 | 初期成果の達成、阻害要因、入社者別の定着 |
| バディ制度 | 新人が困りやすい社内ルールやツールを整理し、答えられる担当を選ぶ。 | 質問が解消する時間、孤立感、相談先の理解 |
| 入社前の受入監査 | 権限、端末、研修、初日の予定、連絡先を一覧にし、未準備を確認する。 | 初日の準備完了率、権限待ち時間、初週の困りごと |
| 週次の障壁確認 | 今週止まった仕事、誰に聞いたか、まだ解決しないことを聞く。 | 障壁の解消率、相談への反応、初期成果までの期間 |
担当候補:人事・直属上司・受入担当。期待する変化は「新人が仕事の期待、相談経路、次に取り組むことを理解できる。」。ただし、チェックリストを完了させても、本人の理解や仕事上の困りごとを確認しない。
5施策の実行手順と失敗条件
1. Realistic Job Preview
- なぜ効くと考えるか
- 良い点と難しい点を入社前に伝えると、候補者が自分との相性を判断できる。応募を増やすより期待差を小さくすることが目的。
- 最初にすること
- 新人が驚いた仕事内容や働き方を集め、求人と面接の説明との差を確認する。
- 実行と成果物
- 繁忙期、仕事の難しさ、支援方法を具体的な例で伝える。職場見学や社員対話で確認し、候補者が辞退を選ぶことも適切な判断として受け止める。
- 見る指標
- 入社前後の期待差、90日定着、辞退理由
- 失敗しやすい点
- 厳しさを美化して耐える人だけを集めない。改善すべき労働環境は別途直す。
2. 30・60・90日計画
- なぜ効くと考えるか
- 小さい到達点と確認日があれば、新人は何に集中するか判断できる。上司も問題を早く発見できる。
- 最初にすること
- 役割に応じた初期成果を上司と決め、最初の30日に絞って具体化する。
- 実行と成果物
- 60日で広げる仕事と90日の自立範囲を合意する。計画から遅れた時は本人の努力だけでなく、権限、資料、指導時間の不足も点検する。
- 見る指標
- 初期成果の達成、阻害要因、入社者別の定着
- 失敗しやすい点
- 全職種に同じ計画を押しつけない。学習期間が長い仕事では目標の内容を変える。
3. バディ制度
- なぜ効くと考えるか
- 直属上司に聞きづらい小さな疑問を解消する相手がいると、迷いが長引きにくい。人間関係を自然に任せず接点を設計する。
- 最初にすること
- 新人が困りやすい社内ルールやツールを整理し、答えられる担当を選ぶ。
- 実行と成果物
- バディの役割を生活・社内手続きの相談に定め、評価や専門指導との境界を明確にする。休暇時の代替担当と時間枠も用意する。
- 見る指標
- 質問が解消する時間、孤立感、相談先の理解
- 失敗しやすい点
- バディの負荷が増えすぎると続かない。本人の通常業務と調整する。
4. 入社前の受入監査
- なぜ効くと考えるか
- 初日の不備は『歓迎されていない』という解釈につながる可能性がある。準備を部署任せにせず、責任者と締切を定める。
- 最初にすること
- 権限、端末、研修、初日の予定、連絡先を一覧にし、未準備を確認する。
- 実行と成果物
- 入社前に必要な手続きと初日の流れを本人へ伝える。準備できないものは代替手段を用意し、働けない待ち時間を減らす。
- 見る指標
- 初日の準備完了率、権限待ち時間、初週の困りごと
- 失敗しやすい点
- 入社前に無償の業務や過度な研修を求めない。必要手続きと仕事を分ける。
5. 週次の障壁確認
- なぜ効くと考えるか
- 進捗面談だけだと、本人は不安を隠して順調と答えることがある。困っている場面を具体的に聞けば、仕事側の改善につなげられる。
- 最初にすること
- 今週止まった仕事、誰に聞いたか、まだ解決しないことを聞く。
- 実行と成果物
- 課題ごとに本人がすることと上司が支援することを分ける。次回に解決を確認し、同じ課題が複数の新人に出れば受入手順を修正する。
- 見る指標
- 障壁の解消率、相談への反応、初期成果までの期間
- 失敗しやすい点
- 安心感を点数で尋ねるだけで終わらない。答えに応じた具体的な対応を行う。
最初の30日を、小さく試す
| 時期 | 決める・確かめること | 残す記録 |
|---|---|---|
| 1週目 | 同じ入社月の人を90日後まで追い、入社人数・在籍人数・退職理由を残す。まだ90日経っていない人を分母に混ぜない。 | 対象人数・期間・現在の状態 |
| 2週目 | 人事・直属上司・受入担当と担当・時間・権限を合意する | 実行条件と予算・協力時間 |
| 3週目 | 実施後に『初日に必要な道具、権限、席、担当者は揃っていたか。』を再確認する | 利用できた人・障害・反対の声 |
| 4週目 | 継続・修正・中止を判断する | 変化・同時に変えた条件・次の確認日 |
実行チェック
出典・対象・関連記事
- 厚生労働省 / 2025年雇用動向調査(2026年8月31日公表) ↗2025年の年間離職率。全国16大産業・常用労働者5人以上の事業所。年初の常用労働者数を分母とする推計値(概況6ページ・表1)。
資料確認:2026年10月8日。原資料の必要な要点を独自に要約し、図解・比較表・実行手順はJPMが設計。実務仮説や仮想例は、効果が実証された事例ではありません。専門家の個別監修を受けた記事とは表示していません。
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